たかが世界の終わり:家族は二度変わる
こんなファミリー映画は初めて観た。
- 詩的な美しい台詞、照明、色使い
- 物語を停滞させない音楽を活用した回想シーン
- ラストの壮大などんでん返しで魅せる圧倒的なテーマ性
とにかくすげえ生々しいんだよ。
家族って社会団体を維持する努力の難しさがメインテーマ。
「家族」ってのはいつでも暖かく迎えてくれるモノ,っていう固定概念があったが,現実はもっと不安定だ。
マルティーヌが願う「家族」はその「いつでも暖かく迎えてくれるモノ」だが,それを周りの皆が支えてようやく成り立ってる構造。
そこに参画しなかったルイは怠け者と見なされたんだ。
ルイはおそらく人間関係全てに対しても"怠け者"だったと予想する。
でも,友人と家族は人間関係の役割が大きく違う。
家族関係は二度変わるのだ。
それは子どもが自立したときと,親が老いたとき。
始めは親が圧倒的に上の立場であり,子どもは基本的に親に従う。
それが子どもが自立してくるようになると,段々親と対等な議論ができるようになってくる。
子どもからすると,親が絶対の正義でなくなるこの瞬間が第一のショックとなる。
そして第二のショックは,親が子どもに対して心身共に頼るようになった時に起こる。
子どもが"親の生きる喜び"まで含めて支えるようになるのだ。
今作ではこの2回の変化をアントワーヌは体験していたと思われる。
そして,ルイはどちらの変化も知らず,家族に子どもの役割として参加してしまったのだ。
ルイは当たり前に家族に属しているのは確かだけど,彼の立場・役割は知らぬ間に変わっていた。
友だちに久々に会う感覚では家族に顔を出すことは出来ないのだ。
ただ,「自分が受動的に属している社会団体」にどれだけ参画するべきなのかはまた正解はなく難しいところのように思う。