msha_on’s blog

映画を観た感想を中心に日常の気づきを呟いていくドラえもん好きです。

のび太の月面探査記:僕たちは大山のぶ代に,学習まんがのドラえもんに,育てられてきた

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「南極カチコチ大冒険」*1のぶっ飛んだSFに,「宝島」のドラえもんに対する新たな解釈と,ここ数年は新鮮なドラ映画が続いてきたが,今年で原点回帰してきた.

 

直木賞作家の辻村深月が脚本になって盛り上がってたけど,捻くれもせずにまっすぐなドラ映画を作ってくれた.

順当なドラ映画を得意とする八鍬新之介監督とのタッグも相性が良かったかもね.

 

そんな中でも,辻村深月の思うドラえもん像がちゃんと表現されてたので本レビューはそこに焦点を当てる.

だから「どんなことが起きる〜」みたいな本筋のネタバレはないけど,細かい演出とかには言及していきます.

 

 

 

まず,(特に前半で描かれる)辻村深月ドラえもん愛は半端じゃなかった.

ドラ映画の特別感だけじゃなくて,日常のドラえもんも描きたかった印象だ.

例えば予告でも見られる多目くん,ムス子さんを始めとした見覚えのある生徒たち.

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予告1より

ドラ映画に多目くんが出演したのなんて,恐らく本作が初なんじゃない?(普段意識してないから自信はない)

ニッチなとこ以外でも,のび太を叱る先生,おつかいを頼むママ,穏やかなパパ,教育的だけど子どもっぽい可愛さもあるドラえもん…….

出来杉の出番も映画の割にはかなり多いし,普段のドラえもんのイメージがギュッと詰まっていた.

 

 

その上で本作の特色は,ドラえもんの「大山のぶ代感」と映画全体の「同じ目線感」の2つが挙げられると思う.

 

何が大山のぶ代かって,ドラえもんが微笑むときに「ふふふ」って言ったんだよ.

それが完全に大山のぶ代のそれなの.

1回気のせいかな?とも思ったけど,2回「ふふふ」があったから確実に意図的だ.

ドラえもん*2の優しく見守る実家のような温かさを思い出させる,一瞬だけどとても印象的な台詞だった.

 

次に,今作は観ている側を意識した演出が多かったように思う.

一緒に盛り上がりたくなるようなかけ声や,キャラクター同士が会話しているようで観者に解説しているようなシーンが顕著だった.

宇宙,月や異説等について丁寧に解説してくれるドラえもんは,幼い頃に本家ドラえもんと同じくらい慣れ親しんできた「学習まんが」のドラえもんさながら.

僕たちのようにドラえもんカルチャーが成熟した時代に育った人間にとっては,教育コンテンツとしてのドラえもんも「ドラえもん」の一部だよなぁと気付かされた.

 

まあ「ドラえもんが子どもを教育するのは当たり前じゃないか」なんて思われそうだけど,そう単純ではないのだ.

例えば「のび太の宝島」で表現されたドラえもんは,日常をより豊かに楽しむARコンテンツとしてのドラえもんだ.

東京メトロの広告にいるドラえもんは,東京メトロの印象アップのために商業的に扱われるドラえもんだ.

ドラえもんが持つサブカルチャー的役割と子どもに対する教育的役割は,恐らく少し違う.

本作では,子どもにとってのドラえもんとは何であるかを表現していたのだろう.

 

月面探査記が発表されたときにはちょっと面食らってしまったけど*3ドラえもんドラえもんを観る子ども達への愛を映画全体でガッツリ体現した素敵な映画だった.